真赤―まそほ―

あたたかな手


 「お前の手は本当に大きいな」
 無骨な手を取りしみじみと曹操は言った。
 寝台の縁に座り、その後ろから曹操を抱え込むように許チョが腰掛けている。他の者であれば許されはしないその行為は、曹操自身がそうしろと許チョに言ったものだった。許チョの懐に体を凭れ掛けさせ、手を眺めている。
 確かに曹操は小柄ではあるが、女に負けるわけではない。手も骨は太くごつい。戦う男の手だ。だがそれよりも許チョの手は一回り近く大きく、指も長かった。許チョの獲物は剣ではなく戟なので、自然と曹操とは違う豆の付き方になる。硬くなった皮膚は女の柔らかさとは程遠いが心地のよい暖かさがある。
 「だが指もなかなか太いと言うのに、意外と細かく動く」
 「そうでしょうか」
 「ああ。ここだと、特にな」
 「………………」
 戦場ではなく、この場所で。
 何と答えてよいのか分からなかった許チョは口を噤むことにした。細かく動かそうとして意識したわけではなく、繊細さなど無い自分が、相手を傷つかせないよう、注意していただけだった。自制は利かせているが、時折求めるのに応えるために荒くなってしまうことがあるのだ。そうなると自制していても力が強くなる。しかしそれを曹操は楽しんでいる風もあった。
 「虎痴」
 昔はあまりその名で呼ばれるのは好きではなかった。今は一人だけに呼ばれる名になっていた。
 見上げてくる視線に顔を寄せ、軽く重ねてから首筋に落とした。曹操は僅かに首をすくませてから、喉の奥で笑う。先ほど許チョ自身が曹操に着せた夜着の胸元を広げて大きな手を滑り込ませる。曹操の体も許チョの手も暖かい。
 「ん、……ほら、みろ。存外、器用だ」
 体を僅かに震わせて、笑みを刻んだまま言う。曹操の手は許チョの夜着を掴んでいる。
 曹操のどこか楽しげな表情は、わざとあおっているようでもあり、それを見ると、押さえつけたくなる衝動に駆られることもあった。その衝動を無理矢理ねじ伏せて、許チョは曹操を抱く。いついかなる時でも気の抜けない相手。
 「こ、ち」
 首がのけぞり、喉があらわになる。そこへ指をゆっくりと滑らせると、それだけで肩が震える。
 「……っ、あまり、あおるな」
 喘ぐように言われるが、それはそちらの方だと許チョは思う。
 「……宜しいですか、殿」
 小さく幾度か頷いたのを捉える。喉を滑っていた手が夜着の裾を割り、腿を撫ぜ、中心へ向かう。曹操は許チョの手を器用だと言うが、そうさせたのは他でもない曹操自身だ。待ち望んだ刺激に大きく体を震わせる様に許チョは息を飲む。眼が眩む想いが、した。








後ろから着衣のままです。指はごついので色々大変です。
でも意外と器用だ。

……ごめんなさい。

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