赤壁で劉尚を考える其の一
※親しい間柄は字呼びにしています。
※キャラが結構違うかもしれません、ご容赦ください。
■取り合えずそういう話が出ました■
孫権「尚香、本当にいいのか?」
尚香「何よ、兄様が最初に薦めてきたんじゃないの」
孫権「それはそうなんだが、あのあと義姉上に言われてなぁ。確かにあの時の発言はお前の気持ちを考えていなかったと反省している。だがそう悪い話ではないとも思うんだ。お前に、他に好いた相手がいるというなら別だが……」
尚香「………………」
孫権「……もしかしているのか? 誰だ? 私が知っている者か? ……もしかして諸葛孔明か?!」
尚香「どうしてそこであの人が出てくるのよ」
孫権「お前、諸葛孔明と意気投合していたみたいじゃないか。いかんぞ、あやつは悪い者ではないが
腹が黒すぎる!!」
周瑜「問題はそこですか仲謀様」
尚香「そもそも腹が黒いのに悪い者じゃないってどういう」
魯粛「それ以前に孔明殿にはすでに奥方がいますよ我が君」
お兄ちゃんは心配性。
■親交を深めると言うことで劉備さんが
遊びに来ました■
劉備「………………」
尚香「………………」
いきなり虎狩りに連れてこられました。
劉備「……その、狩りはともかく、獲物が虎とは、少々危険ではないですか?」
尚香「あら、怖気づいたの?」
劉備「そういうわけではありませんが、女性がなさるには危ないと思います」
尚香「貴方も女は奥に引きこもって刺繍をしていろっていう人? 差別もいいとこだわ」
劉備「いえ、そうは申しません。女性でも貴方のように勇ましい方がいるのは知っている。けれど、相手は人ではなく獣だ。人が相手の場合でも危険だが、獣は相手を獲物とみなせばそこに容赦は微塵もない。狩りに慣れた者でも危険です。そして例え腕がたとうと、男の方が女性より体のつくりが丈夫なのは事実。なれば、男としては、女性にはやってはほしくないと思うものです」
尚香「……男の勝手な言い分ね」
劉備「そうかも知れません。ですが親しい方に危険なことをしてほしくないというのは、誰しも同じではありませんか」
尚香「特に貴方と親しくはないと思うけれど」
劉備「ははは、これは、手厳しい。……孔明を連れてくればよかったですね、貴方と気があっていたでしょう。やはり、私とでは歳も違いすぎるし」
尚香「────そんなこと、言ってないでしょう! 勝手に変な気を回さないで!」
劉備「尚香殿!」
怒って行ってしまいました。後を腰元の女性達が追っていきます。
劉備「……なぁ、子龍よ、私は何か悪いことを言ったんだろうか……」
趙雲「申し訳ありません、私にもさっぱり……」
後で孔明に思い切り呆られました。
孔明「尚香殿の方から我が君自身をお誘いしたのに、他の者との方がよかったのではないかと言うのは女性に対して失礼だと思いますよ。趙雲将軍ももう少し女性の気持ちを勉強なされた方がいいと思います」
主従そろって超鈍感。
■悩める年頃■
尚香「何なのよ、何でそこで孔明なのよ! そりゃ確かにあの人と話すのは結構楽しいけれど、そうじゃないでしょ! 少し歩み寄ってみようと思って誘ったのにこれじゃ私が馬鹿みたいじゃない! あーもーやっぱり無理! 無理なのよ! 悪い人じゃないと思うけど無理!!」
小喬「でもいきなり虎狩りに誘うと言うのもどうかと思うけど……」
尚香「だって他に思いつかないんだもの!!」
小喬「(茶の作法とかできないし、演劇にも興味ないしねぇ……)そうでもないでしょう」
尚香「じゃあ、他に何があるの? 相手がつまらないと思うものにつき合わせるのは癪だわ。こっちが招待するんだから、相手が面白かった! って思う方がいいと思うし、でも私がつまらないのもいやだし、そう考えたら、男の人は狩りが好きだと思って」
小喬「何だか勝負をするみたいね」
尚香「………………」
小喬「でも、尚香が言うことは間違ってはいないと思うわ。相手も自分も楽しめることを探すのはとても良いことだと思うの。ただ、尚香と劉備様はお二人ともお互いに気を遣いすぎているのではないかしら」
尚香「……そんなことないわよ。私があの人と一緒になってもいいって考えたのは、やっぱりこの国とと兄様のためだし。そりゃ、人の気持ちも考えないで道具にするなんてとは思ったけど、兄様たちも大変だし、私が気にしてるのは兄様たちだもの。あの人は関係ないわ。まぁ、一緒になるなら、気が合う方がいいなとは思うけど」
小喬「そう思うことが大切なのよ。……私も、最初、公僅様と出会った頃は、公僅様のことは嫌いだったし」
尚香「嘘! いつもあんなに仲睦まじいのに?」
小喬「今ではあの方のことを愛しているけれど、出会った最初から相手を好きでいる、と言うことは難しいでしょう?」
尚香「……そうね。でも信じられないわ。お義姉様たち見ていたら、最初から好きあっていたと言う風にしか見えないもの」
小喬「いきなり誘拐同然に連れてこられてはさすがに好いてくれという方が難しいと思うけれど」
尚香「でも、好きになったんでしょう?」
小喬「……ええ。話をしていくうちに、あの人の人となりが見えてきて、いつしか一緒にいたい、と思うようになったの。想いは育むものだと思うわ。育む暇もなく結婚をしてしまわなければならないこともたくさんあるけれど、それでもその後で二人で作り上げていくこともできる。……どうやっても良い方向へ行くことができない場合もあるけれど、まずは行動を起こしてからでないと、結果がどうなるかは分からないから。何もしなければそのまま。それは楽だけど、尚香はどうかしら?」
尚香「……嫌だわ。何もしないなんて消極的なことしたくないもの!」
小喬「そうね、尚香にはそれが良いと思うわ」
尚香「悪い人じゃないのよ、最初は嫌だったし、臆病者とも思ったけど、実は結構無謀というか、自分を省みないとこあるみたいなのよね。だって、軍の総大将なのに前線に立つ? あのお歳なら後ろでどんと構えているものだと思うけど」
小喬「よく見ているのね」
尚香「付き合っていかなくちゃならないなら知っておかなくちゃいけないでしょ。孔明からも色々聞いたし。色々やって、駄目なら駄目だって兄様に言うわ。このままやめるのは敵前逃亡みたいですっきりしないもの!」
小喬「(やっぱり勝負をするみたいだわ…)」
男女のかけ引きは戦のそれに通ずるものもある。
■歳をとってもお付き合いは難しいです■
劉備「孔明、尚香殿からまた誘いが来たのだが」
孔明「さすが尚香様ですね」
劉備「(さすがとはどういう意味だ…)この間のことは謝ったが、まだ怒っていたみたいだったんだが、これはどう取ればいいのだろう」
孔明「我が君は尚香様をどうお思いでしょうか」
劉備「どう、と言われてもなぁ。可愛らしい方だと思う。それに勇ましい。翼徳はじゃじゃ馬だと言うが、私はあれくらい元気だといっそ清々しくてな。好意は持っている。だが、あちらは私をよくは思っていないだろう。歳は離れているし、半ば政略結婚のようなものだ。まだ若い尚香殿には割り切れるものではないだろう」
孔明「ですがこうしてお誘いしてくださる」
劉備「うむ」
孔明「尚香様は我が君と親しくなろうとしておられるのですよ。例え政略結婚だとしても、気持ちが合う方が宜しいでしょう。あの方はあの方のお考えで、その糸口を見つけようとなさっているのだと思います」
劉備「それは嬉しいことだが、結婚は結婚だろう。父親ほど歳が離れた相手と、なぁ」
孔明「そう珍しいことでもないでしょう。尚香様も分かっておられてなおこうしてお誘いをくださるのです。我が君の方が、引き腰でありますな」
劉備「………………」
孔明「尚香様に気を遣われるのは無用のことと存じます。逆にそれは、あの方にとって失礼かと。親しくなろうと奮戦しておられるのに、その相手が自分を見ようともしないのでは、悲しすぎます」
劉備「そんなことは、ないのだが」
孔明「まずは婚約だの結婚だの考えず、尚香様のお誘いを楽しんできてはいかがですか。それと、何か尚香殿とあっても趙雲将軍には相談なさらぬよう」
劉備「何故だ?」
孔明「戦ならばいざ知らず、
そういうことに関してはまったく頼りにならないからです」
真の武士なれど故に朴念仁。
■再び劉備さんが来ました■
劉備「これは、凄いな」
尚香「でしょう! 兄様に言って借りてきたの。これで下ればお昼前には目的地に着くわ。そこでお昼を食べて、帰りはのんびり戻りましょう」
船で河下りの真っ最中。
劉備「それはいいですな。私は生まれも育ちも中原だったから、あまり河と馴染みがありませんでしたから」
尚香「孫呉は海や河と共にあるのよ。兄様たちも私も幼い頃からよく船に乗っていたわ」
劉備「なるほど、だから孫呉の水軍はあれほど強いのですな」
尚香「そうよ、どこにも負けないんだから!」
にっこり笑っている劉備さん
尚香「……何? 私の顔に何かついてる?」
劉備「あ、いや、これは失礼。ただ、良い顔をなされると思って」
尚香「え?」
劉備「貴方が愛されて育ってきたと、貴方も周りを愛して育ってきたのだと、よく分かります」
尚香「……い、いきなり何言ってるのよ、恥ずかしい人ね」
劉備「そ、そうですか? ん、これは、またやってしまったかな……」
尚香「何が?」
劉備「いや、何でもありません」
尚香「………………あの、前から気になっていたのだけれど、どうしてそんなにかしこまった言い方なの? 他の人と話すみたいに話してくれていいのに。……むしろ、私の方が、こんな話し方は駄目だって言われそうなものだけど」
劉備「構いませんよ。その方が貴方らしい」
尚香「だったら貴方もこんな風に話してよ」
劉備「……ん、んん……あー、では、……これでいい、かな、尚香殿」
尚香「ええ! 今までのは物凄く他人行儀で嫌だったのよね。その方がずっといいわ」
劉備「う、嫌だったのか……この歳になっても、まだまだ女性に関しては勉強不足かな」
尚香「あはははっ」
尚香「(何だ、案外簡単に話せるじゃない。あれだけ気合入れてきたのにちょっと拍子抜けかなぁ。でも河下りの選択は間違ってなかったみたいね。よし。何とかなりそうだわ、お義姉様!)」
やっぱりまるで勝負をしているようです。
続く。
劉備と尚香(孫夫人)が物凄く好きです。
赤壁1を見たとき、まだうら若い尚香がお爺ちゃんになりかけのおっさんである劉備の嫁さんになる予定だというのを友達から聞いた時はえらい驚いたものですが(だって赤壁で結婚の話が持ち上がった時の劉備さんの態度がどうみても
助平親父にしか見えなくて)(しかし小説を読むと単純に恥ずかしくて照れていただけだったと言う。ちょ、50にもなるおっさんが照れるだなんて
可愛いじゃないかチクショー!!)
赤壁では尚香は劉備さんのことは気にも留めてないんですが(むしろ孔明さんとフラグ立ってたし叔材いたし)でも一応あのまま話が進めば、結婚もあるんだろうなぁと仮定して。
(孫権が意外と劉備さんを好意的に見ていたのが少し嬉しい)
(因みに小説で劉備軍が一度孫呉との同盟を破棄して撤退した(フリをした)とき、孫権が孫呉に残った孔明さんを
がばーっと抱きしめるシーンがどえらい好きです。腐な意味ではなくて、孫権の男前な行動と驚いている孔明さんが可愛くて)
(でものちを考えると、孫権も劉備軍撤退が演技だと知っていたのだから、この行動も演技?個人的にはこのときは知らなくて後で周瑜さんに教えてもらったと言う流れがいいなぁと思うんですが、作戦を殿に黙って実行するのはありえないか。でも演技でもまさか孫権がそんなことするなんて孔明さんも思ってなかっただろうから驚くだろうなぁ)
小喬はブログで書いたときは尚香を『姫様』と呼んで、敬語遣いだったのですが、この間吹き替え版パート2を見たら『尚香』呼びで敬語ではなかったので直しました。
でも、幾ら義妹とはいえ、主君の妹なんだから、敬語の方がいいんじゃないかなぁとか思ってみる。
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