真赤―まそほ―

ネクタイ


「洪殿。これを。」


珍しく曹洪よりも遅く帰宅した徐晃が、デパートの紙袋を差し出した。


「何だこれは。」
「ネクタイです。洪殿に似合うかと思い買ってまいりました。」
「ネクタイ?今日は俺の誕生日でもないし、ましてやクリスマスはとうに過ぎたぞ。」
「ですがバレンタインが近いです。」
「アホか。」
「まあ、そんなことよりもせっかく買ってきたのですから開けて、試しに締めてみてくださいませんか?」


ネクタイの入っていた袋は銀座の高級デパートの紙袋。
しかも、中からのぞく包装紙は一流ブランド。
流石に断らずに素直に受け取る曹洪。
ネクタイの収まっている箱を開けてみると、想像以上に高級そうなネクタイが色・柄違いで5本も入っていた。


「――――おい、徐晃。」
「はい。」
「このネクタイ、一本5.6万はするやつだろう。」
「そうですな。」
「なぜ5本もあるんだ?」
「洪殿の好みがわかりませんので。」
「全部もらってもいいのか?」
「もちろんです。」
「後で代金や見返りを請求するなよ。」
そんな口を利きながらも声はとてもうれしそうだ。


「そのようなことは致しません。毎日そのネクタイを締めてくだされば満足です。」
「ふーん。良くわからんが有り難く受けとっておく。
 早速明日締めて行っても良いか?」
「光栄です。」


手持ちのどのスーツに合わせようかとうきうきしている曹洪の後ろ姿をニヤリと見つめる徐晃。




「ネクタイ」を贈る、というのは「あなたに首ったけ」という意味を曹洪は知らない。









「なりき屋おぞい」の小桂様からいただきました!
バレンタイン話で晃洪。
なお、追記として『5本贈った=毎日自分の贈ったネクタイだけしかしない。の意。』だそうですwさすが徐晃さん、外堀から確実に埋めていく。恐ろしい人め……!
その意味に曹洪さんが気が付くのはいつでしょう。
気がついたとしても、女性社員からは評判いいし、何と言っても高いしで外すに外せない!

ちなみに最初にネクタイを贈ったくだりを読んで頭に浮かんだのは首に締めるのではなく手首を縛(以下削除)
すみませんごめんなさい頭腐ってて申し訳ありません。


ともあれ本当に有難うございましたー!!



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