真赤―まそほ―

無双仁典で妄想:其の弐


曹仁「──以上が報告となります」
曹操「うむ。後は任せるぞ、子孝よ」
曹仁「はっ。かしこまりました」
李典「あっ、おーい、曹仁殿ー!」
 廊下を歩きつつ報告。その姿を見かけた李典さんが遠くから手を振ります。
 どうやら曹操には気が付いていない模様。曹仁軽く手を挙げて返事をします。
 ※曹操と曹仁は同じ背丈なので別に曹操が小さいから気が付かないわけでは(以下削除
曹操「ははは、随分懐かれたようだのう。
   お前と李典を組ませたのは正解だったようだな。
   どうだ、お前から見て李典は」
曹仁「はい。普段は軽妙さが目立ちますが、その実、物事への観察眼はなかなかのものです。
   常に何かを考えているようですが、それをまだうまく処理しきれていない。
   しかしここぞと言う直感は舌を巻くほどです。
   それをすべて信じてはならぬと思いますが、
   そこから導き出される堅実な策にはこちらを驚かせるものもございますな」
曹操「そうか。お前をしてそう言わしめるのならば、わしの目はまだ衰えてはおらんな。
   そういえば聞いたぞ。お主ら、仕事だけでなく私事でも付き合いが多くなったそうだが」
曹仁「よく声をかけられるのは確かです。
   自分としては、李典のような軽妙な若者が、
   何故自分のような者に仕事以外で話しかけるのかあまり分からぬのですが……」
曹操「お主が李典を笑わぬからであろう。
   あ奴は少々誤解されるところがあるからな。
   それをお主は真正面から迎え入れ話を聞く。それも一度大きくやりあった後でだ。
   打ち解けたのであろうな。信頼を寄せているのだろう。
   ふむ、そうだな。さしずめ、教師と生徒のようなものか」
曹仁「なるほど……合点がいきました。
   ですが、自分はまだまだ未熟です。前回のことも、あやつにいろいろと教えられました」
曹操「ふふ、そうやって人は大きくなるものよ。
   お主とて、昔は大層な悪童だったしな?」
曹仁「………………お戯れを。
   今思い出しても赤面の至りです」
曹操「ははは! わしは楽しかったがなあ。
   ところで子孝」
曹仁「はい」
曹操「次の出陣では李典は夏侯惇につけようと思う。于禁と一緒にな」
曹仁「……そうですか。分かりました」
曹操「どうした、随分がっかりした様子だな?」にやにや
曹仁「そのようなことはございません。
   ……ただ」
曹操「ただ?」
曹仁「あの賑やかさがしばらく聞けぬのは、静かにはなりますが少々寂しいか、と思いまして」
曹操「そうかそうか。それは李典に言ってやれ。喜ぶと思うぞ」
曹仁「…………」









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